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味覚の不一致

だーんっ! と、食卓に飛び乗ってくる猫。君、人間に換算すると何歳だっけ、何その運動能力。猫はあたりを睥睨し、自分の欲しい物がないと、きびすを返して立ち去る。君の嫌いなものの中に、おいしいものがあるんだけどなぁ(にやり

・ヨーグルトは好きだけどプリンは嫌いだ。
・牛乳は好きだけど、低脂肪乳は理解できない。
・ミントの香りとかも苦手だ。

そんな我が家の猫のマイブーム。シリアルを食べた後の牛乳。正確には低脂肪乳。猫にしてみたら、普通の牛乳がおいしいのに、なんでわざわざ薄くして飲むのか理解できないのだろう。低脂肪だけだと「猫また」がれる。ところが、シリアルを食べると低脂肪乳の不満が消え、猫にとっておいしいものに変身するようだ。砂糖などがまざって甘くなるのがいいのかな。

「あ、シリアルだ、残しておいてね」
とりあえず、人間の視線に入る場所に陣取り、正座してアピール。君、さっきまで寝てませんでしたか。なぜシリアル食べていると気がつきましたか。

「全部食べちゃわないでね」
「あー、あげるからちょっと待ってて」などと猫を牽制しつつ、シリアルを食べます。猫、じりじりと近づいてきます。

「ちょうだい、ちょうだい」
食卓に飛びつき、両前足の爪をめいっぱいだして、「くれろくれろ、なくなるなくなる」とちょうだいアピールをします。なんか性格かわっていませんか。

そんな三段階を経て、器にちょこっとミルク残して渡してやると、堪能して帰って行きます。あれか、もしかして、君の一連の行動は、おいしいものをもっとおいしくするための儀式か何かなのですか、猫よ。

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ばちこん

A「あのさ、携帯にSuicaみたいのついてるじゃん」
B「あー、おさいふ携帯みたいのね」
A「うん。あれ、とても便利そうなんだけど、心配なことがある」
B「忘れると、携帯も定期も使えなくなる、みたいな?」
A「あ、それもそうなんだけど、そうじゃなくてね、携帯って精密機械じゃん」
B「うん」
A「衝撃とかいけないじゃん」
B「そうだね。落としたりしないように気をつけるね」
A「でも、ICカード乗車券って、改札通るときに、ばちこんって接触させない? 小さな衝撃かもしれないけど、毎日のことだと携帯が壊れないか心配」
B「え?」
A「え?」
B「改札にSuicaとかぶつけてるの? かざすだけで通れるよ」
A「接触いらなの?」
B「やってみ。パスケースもって、親指の厚さくらい離しても普通に改札通れるから」

……後日。

A「やってみた。通れた。今までの『ばちこん』は、なんだったんだろう」
B「Suicaも痛かったろうねぇ」


※僕がAです……。

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物干し台

昨日は雨が降りました。ぬれてませんか。材質はトタンに見えるけど、冷たくありませんか。吹きっさらしの場所で、君はこごえていませんか。


車窓から住宅地の一角をながめたら、物干し台があった。昨日は雨が降ったし、今日も曇天だから洗濯物は干されていない。物干し竿が一つあるだけだ。がらんとした正方形のスペース。物干し台は、民家の一部を改築したか、あるいは庭に増築したものだと思う。車窓からは陰になっていてるが、階段が設置されているようだ。手すりの一部が見える。床は、白っぽいトタンを敷いたようだ。


黒地に茶色のぶちがある猫が、この物干し台を占領している。猫がいるということは、寒そうに見えて案外快適なのかもしれない。周囲の建物の加減で、風の吹き方も違うのかもしれない。猫がぽつんと物干し台に座っている。白系統の屋根に黒地の猫だから、目立つ。とはいえ、車窓以外からは死角になる場所なのだろう。少し寒くても、猫にとっては気分がせいせいする場所なのかもしれない。


冬空の下、物干し台で、猫がこうばこ座りしていた。野良の平均寿命は2,3年だと耳にした。半野良というよりは野良のように見えた。短い持ち時間の中で、何度目の冬超えになるのだろう。

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待機

既製品はヤ。「ねこちゃん用」じゃものたりない。それより、人間が大事そうにしてるのに乗っかり、なし崩しに僕のものにするのが好き。そんな性格の猫と暮らしている。
冬になり寒さが増してきた。暖房も活躍しだした。オーディオ用の段ボールで工作して作った、彼専用段ボールハウスの中に、彼の気に入った布地をしきつめ、今年も冬期別荘を用意した。20世紀生まれの彼。さすがに年をとった。あいかわらず悪戯はするが、後ろ足に衰えの兆しが見える日が増えた。


衰えると、爪の管理が難しくなる。カーテン、膝掛け、人間の衣類等に爪を引っかけて難渋することが増えた。「冬期別荘」から飛び出したら、近くにあった布に前足の爪がひっかかった。たまたま近くに人がいたので、「やってもうた」って顔をして、救助されるのをじっと待っていた。カーテンにからまってパニック起こしてたときは、「今とってあげるから」と話しても、通じず大暴れした。それを思うと、彼も大人になったなぁと感慨を抱く。


猫の部屋に人がいない時に、彼が救助を待ってる事態は避けたい。ひっかかりそうなものは無いか、よくよく点検した。暑い夏は過ぎたよ。君の好きなひなたぼっこを満喫できる季節になったよ。でも、寒くもなるよ。暖かくして、春をまとうな。

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うっとり

猫が液体になった。
「ほどける」「くつろぐ」ではなく、「とろける」と呼びたいありさまだ。


我ながら大人げないと思うのだが、先日、冬期に膝掛け代わりに使う寝袋を、猫に自慢した。猫は寝袋に大喜びで入り、さっそく丸くなって眠っていた。猫に「ひとでなし、ひとでなし」と抗議されたが聞こえないふりをして、寒いので返してもらった。以来猫は、自分のお気に入りの場所でくつろいでいても、前足で場所をもにょもにょと整えながら、「何か違う」と哲学者のような顔をするようになった。
「あー、こりゃ、寝袋の生地を記憶しちゃったな」と罪悪感を抱いたので、罪滅ぼしに、似たような生地を探して猫に与えた。最初は「ふーん」とつれないそぶりだったが、いざ乗ってみたらとてもしっくりきてしまったらしく、軽くて温かな素材から離れなくなった。


雨の日の猫はとことん眠い。さらにこの生地の上で寝ていることもあり、呼んでも「ちょ、ごめ、すごく眠くて……」みたいなありさまで、猫が起動しない。夏ではなく、冬に猫が溶けた。

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